アメリカでの就労を実現するには必ず直面するのがビザの問題です。今回はアメリカで働こうとするエンジニアが一番活用するH-1Bの厳しい状況について、2018年7月時点での状況をまとめたいと思います。前回の投稿でH-1Bビザの審査が厳しくなっている件を書きましたが、さらに厳しい現実がアメリカのニュースで取り上げられています。またOPTへの影響についても述べていきます。
H1Bビザの審査状況(2018年7月)
去年、今年とH-1Bビザの申請者数は若干減少傾向にあるようですが、依然許可枠を大きく上回る申請数があったようです。2018年の申請は4月に完了しており、7/19付けで当選しなかった方には申請書類の返却が完了したとのことです。
昨今のアメリカ政治方針により、H-1Bビザの配布数の制限や審査の厳格化が進んでいます。さらに、H-1Bビザを悪用して低賃金でエンジニアを採用している会社がシリコンバレーにあったとの報告もあります(The Mercury News)。このような背景から、H-1Bビザを取り巻く環境がかなり厳しくなっています。ということは、申請を却下される申請者の数が大幅に増えているということです。
アメリカの非営利団体による報告によると、今年の第1四半期の申請却下の割合は昨年の最終四半期と比較して41%上昇して22%になったとの報告があります。さらに、H-1B審査で要求される内容を証明するように移民局からの厳しい質問が行われているとの情報もあります。
H1Bビザ所有者の配偶者の仕事制限
H-1Bビザを持つ人の配偶者(H-4ビザ保有者)は、2015年から就労許可証を申請することができるようになりました。それまでは、Eビザ、Lビザ、Jビザ保有者(こちらを参照ください)に限られていました。
しかしアメリカ総務部にて特定のH-1B配偶者をこの方針から外すことが検討されているということがニュースになっています(Silicon Valley.com)。テネシー大学の研究によると100,000人程度の配偶者が対象となり、現在の仕事を失ってしまうことになると報告されています。シリコンバレーのIT企業ではインパクトが大きいと予想されています。これも現アメリカ政府の方針によるとことが大きいようです。しかし、これは前述の通りH-1Bビザの悪用に対する対策とも言われているようです。
H-1Bの取得のみならず、現在のH-1B保有者に対しても影響が表れています。
OPTの申請数が増加
このような状況になってくると、当然H-1B以外のビザを代替えとして入手しようという動きが大きくなってきます。近年申請数が増加しているのが“Optional Practical Training extension (OPT)”です。
OPTとは、学生ビザのF-1で就学している学生が専攻している分野と関連のある業種で企業の実地研修を行うものです。さらに、就学プログラムを修了する前からOPTを始めることができ、最長で1年間OPTを行うことができます。例えば、大学卒業後1年のOPT、その後大学院卒業後さらに1年のOPTといったような使い方も可能です。
The Mercury Newsによると、過去8年間でOPTの申請数が400%増加したと報告されています。OPT申請数の増加はH-1Bビザ取得の厳しさとの関係が指摘されています。というのも、OPTはH-1Bビザと異なり現状では1年間で発行されるビザ数に制限が設けられていません。またH-1Bビザのように就職時の給料レベルの制限もありません。そのため、OPTに参加しながらH-1Bを取得するという流れが留学生で一般的になっているのです。
一方で統計によると、理系分野(Science, Technology, Engineering, Math: STEM)の内、博士号取得者の68%、修士号取得者の60%、学士号取得者の33%がOPTプログラムに参加しているそうです。これからも分かる通り、OPTと言えども高学歴のエンジニアが優先されていることがわかります。シリコンバレーのIT企業では経験者または大学院卒の学生が優先的に採用されており、この傾向も理解することができます。
H-1Bビザの習得が厳しくなりOPTの申請者が増えているようですが、単にアメリカの大学へ留学をしてもその後の就労が厳しくなっているのです。その傾向は現政権の政策によりますます厳しくなっているようです。学士号取得後アメリカでの仕事が得られないため、OPTもH-1Bビザも取得できずに自国へ戻ってい学生がかなりいるようです。
今後アメリカ留学を経てアメリカ国内での就職を考えている方は、学生の内からビザプログラムを確実に入手できるような戦略が必要になってきます。
まとめ
今回は、アメリカの就労ビザの一つであるH-1Bビザについて最近(2018年7月時点)の状況をまとめてみました。H-1Bビザの厳しさが増していいく上に、OPTの取得についてもその影響が表れてきているようです。アメリカでの就労を考えている方は、就労ビザの取得する方法を良く考えておく必要があります。他の投稿でも述べた通り、エンジニアとしてのキャリア形成をしっかりと考え続けると夢に一歩づつ近づいていくことができると切に実感しています。
- H1Bビザの審査状況(2018年7月)
- H1Bビザ所有者の配偶者の仕事制限
- OPTの申請数増加